Hokkaido Centennial Memorial Tower Fun

百年記念塔の解体差し止めを求める住民訴訟始まる

 
令和4年10月3日、「北海道百年記念塔を守る会」がとりまとめ役となって北海道百年記念塔解体差し止め住民訴訟を札幌地方裁判所に提訴しました。
 
北海道の住民87名を原告とし、北海道ならびに鈴木直道北海道知事を被告として、「原告らは、被告に対し、地方財政法8条、北海道文化振興条例3 条、同法5 条、同法6条、行政事件訴訟法3条7項、同法37条の4及び同法9 条2項に基づき、本件記念塔の解体撤去並びに本件記念塔の解体撤去の請負工事代金の支出の各差止を求める」ものです。
 
下記は、同時午後1時に行われた記者会見で配布されたプレスリリースです。
 

 

■私たちのこれまでの取り組み

私たち「北海道百年記念塔を守る会」は、平成30年12月策定の「ほっかいどう歴史・文化・自然「体感」交流空間構想」(以下「空間構想」という)において、「北海道百年記念塔」(以下「百年記念塔」という)の解体が決定されてからほどなく活動を開始し、令和元年2月までに約1万6000名分もの百年記念塔存続を求める署名を道に提出しました。
 
その後、百年記念塔解体を白紙に戻し、改めて議論を行うよう求める意見広告を実現すべく、クラウドファンディングを「北海道百年記念塔存続プロジェクト」名で行い、目標を大きく上回る370万円もの資金を518名の方々からお寄せいただきました。そして令和3年10月10日に北海道新聞朝刊に意見広告を掲出しています。
 
建築や構造の技術者でつくる「北海道百年記念塔の未来を考える会」は、令和2年7月25日と令和4年7月3日の2回、百年記念塔の未来の内部視察を行い、数度にわたって道へ公開質問や保全のための提言、展示イベントなどを実施してきました。
 
市民団体である「北海道を考える会」は、記念塔の保全を求める「アピールウォーク」やチラシ配布、札幌市「チカホ」でのパネル展、関連集会の開催など、道民に広くこの問題を訴える活動を続けてきました。
 
事務局長を務める海堂は、令和元年より「北海道開拓倶楽部」という北海道開拓史に焦点を当てたWEBサイトを運営し、記念塔解体問題が起こると保全のための情報サイト「北海道百年記念塔ファン」を運営しています。
 
さて、意見広告の後、私たちは主に北海道議会への働きかけを続けてきましたが、残念ながら令和四年十月開催の北海道議会第三回定例会において百年記念塔の解体工事契約が承認されようとしています。これが承認されると議会を通して百年記念塔の解体を白紙に戻すことは事実上できなくなります。
 
ここに至り、私たちは北海道百年記念塔の解体を差し止める住民訴訟を本日11時、札幌地方裁判所に起こしました。被告は北海道及び鈴木直道北海道知事、原告は北海道の住民89名となります。
 

■提訴の理由① 百年記念塔の大義を守る

百年記念塔は蝦夷地が北海道に改められ、開拓使が置かれてから100周年を記念する昭和43年の「北海道百年」の中心事業として昭和45年に建立されました。道民の総意に基づくべく北海道百年記念事業と切り離して、町村金五知事を会長とする「北海道百年記念塔建設期成会」が創設され、建設費5億円の半額が道民の寄付によって賄われました。「北海道百年記念塔健立記」は建立の意図を次のように述べています。
 
「北海道は、昭和43年に開道百年の記念すべき年を迎え、同年9月2日、天皇、皇后、両陛ご臨場のもとに、北海道百年記念祝典を挙行、栄光の未来を築く決意を新たにしたところです。 産業、経済、文化など、あらゆる分野において目覚ましい発展を続ける北海道の現状を思う時、かつて原始の密林を切り拓き、厳しい風雪に耐えぬいて、本道発展の基礎を築いた多くの先人の、想像を絶する辛苦を忘れることはできません。 われわれ道民は、先人が示したこの不抜の開拓者精神を受け継ぎ、開道2世紀にふさわしい躍動する産業と香り高い文化が融合する偉大な北海道の建設に向かって、力強く邁進しなければならないと考えます。このような趣意から、先人の偉業を長く後世に顕彰し、慰霊の誠を捧げるとともに、輝く未来を創造する決意を表徴として、道民の総意をもって北海道百年記念塔の建立を企図したところである」
 
道は、百年記念塔撤去後の跡地に「はるか太古から連綿と続く、北海道の歴史・文化と、今日の北海道を築き上げてきた幾多の先人の思いを引き継ぐとともに、お互いの多様性を認め合う共生の立場で、未来志向に立った将来の北海道を象徴する」モニュメントを設置するとしていますが、跡地が生まれたという理由だけで設置されるモニュメントが、あらゆる意味で百年記念塔の代わりを務めることができないのは自明です。
 
私たち道民には、この建立記に示された決意を護り、次代の世代に伝えていくべき責務があります。これがこの訴訟を起した第一の理由です。
 

■提訴の理由② 将来世代の建築文化遺産を守る

百年記念塔では、北海道で初めて設計コンペ(設計競技)が行われました。当時としては破格な100万円という賞金、日本の設計コンペで初めて最優秀賞作に実施設計権を保証するなど、日本建築史においても画期的なコンペでした。
 
黒川紀章氏など全国から299点の作品が寄せられ、選ばれたのが当時久米建築設計北海道支社勤務の一級建築士・井口健先生です。先生は当時29歳、現在も札幌市に在住し、後に改修事業の設計に携わるなど、今も百年記念塔を見守り続けています。数式を駆使して練り込まれた精緻なデザインは、日本建築家協会会長で審査委員長の佐藤武夫氏から「北の大地の交響曲」と激賞されました。
 
外板と骨格には、アメリカのUSスチール社によって発明された錆の被膜が内部の腐食を防ぐ耐候性高張力鋼(通称「コルテン鋼」)が使われています。当時の最先端技術で、日本ではパテントを受けた富士製鐵(現日本製鉄)室蘭製鉄所だけで製造されていました。鉄でありながら時とともに「熟成」すること、北海道生まれの「地元材」であったことが採用の理由です。当時は脚光を浴びた先端技術ですが、錆によって錆から守るという特性が理解されず、その後多くの建築物が解体の憂き目に遭いました。百年記念塔はコルテン鋼による現存する世界最大級のモニュメントの可能性があります。
 
このように百年記念塔は、建立の背景、設計の経緯、用いられた技術、優れたデザインから、将来は重要無形文化財にもなりうる第一級の建築文化遺産と言えます。この将来の北海道の遺産を守り、次世代に伝えたい、これが第2の理由です。
 

■提訴の理由③ 北海道の民主主義を守る

空間構想において、道は百年記念塔について構造上「今後の老朽化の進展を完全に防ぐことは困難である」として、「利用者の安全確保」と「将来世代への負担軽減」を解体理由に挙げています。しかし、その論拠(空間構想41p)を見るとわずか900文字だけの簡素なもので、主張を裏付けるデータが一切示されていないものでした。
 
このことに不信を持った私たちは、道の情報公開条例を活用して関連公文書を取得し、解体理由を精査する活動を続けました。その結果、「利用者の安全確保」と「将来世代への負担軽減」の双方について重大な疑念がいくつも浮かび上がったのです。
 
百年記念塔は、おおむね10年ごとに現況調査を実施し、対応すべき事項と費用を示した10年間の保守管理計画を策定し、継続的にメンテナンスが行われてきました。最後の10年計画は平成23年に策定されたもので、平成33年(令和3年)までこの計画に則りメンテナンスが行われてきたことになります。
 
しかし、開示資料によれば平成25年に、平成23年のメンテナンス計画が破棄され、百年記念塔の解体を含む新たな計画がつくられていました。以降メンテナンス費用は半減し、平成29年からは完全に打ち切られていました。このことを私たちは情報公開条例における知事の押印のある「公文書不存在通知書」によって確かめています。
 
平成30年9月に長さ195センチ㍍、重さ約9キロの部材が落下しました。道はこの事象を「老朽化」の証しとして盛んにマスコミなどにアピールしていますが、この部材は平成4年に後付けされたもので、容易に点検できる場所にあり、その時点で定期点検を含むメンテナンスが放棄されていたことを考えれば、老朽化よりも管理責任が問われるものです。
 
「将来世代への負担軽減」については、空間構想のなかで、百年記念塔の展望室に立ち入らせる状態に回復する場合と、現状のように立ち入らせない場合で、今後50年間の維持管理費がそれぞれ28億円と26億円と提示されました。令和3年度に行われた百年記念塔の解体工事実施設計のなかで単価の見直しが行われ、30億円と28億円に改められました。そもそも解体実施設計を行う業者が出す維持管理費にどれだけ正当性があるのか疑問です。
 
この長期維持管理の試算についても情報公開制度を通して調査したところ、全体の8割近くを占める大規模修繕費について経費内訳が示されていないなど、積算根拠を確かめようがないものでした。このことについて道は令和4年8月になって突如「質疑応答」なる文書を公式サイト上に公開し、「調査報告書において経費内訳は示されていないものの、受託者において一定の根拠を持って積算されたものと認識しています」と大規模修繕費について経費内訳の無いことを公式に認めました。しかし、「一定の根拠」は未だ公開されていません。
 
令和4年2月に道は突然「北海道百年記念広場(仮称)の整備等に関する説明会」をオンラインで開きました。このとき、道はなんと25年も昔の調査報告書を引用して構造的な問題があると説明を始めました。空間構想の根拠となっているのは「平成29年度北海道百年記念塔維持管理計画査定調査報告書」です。真に塔に問題があるのであれば、この平成29年報告書の全文を開示すればいいのです。そのことが未だに行われていないところにこの問題の闇があります。
 
以上のように「維持管理費」「老朽化」という道が百年記念塔を解体する二大理由はすでに破綻状態にあります。この他、道が広く道民意見を聞いたとして挙げる「利用者アンケート」や「ワークショップ」「出前講座」なども、その関連資料の開示を求めたところ、露骨に解体に誘導するものだったり、多数を占めた解体反対意見を少数意見に見せかけるなど、極めて恣意的な処理が行われていることが明らかになりました。
 
鈴木知事は、平成28年から始まった検討プロセスに瑕疵がないとして解体を承認しましたが、その検討プロセスなるものは、内実を隠匿し、アリバイ的に表面を取り繕ったものだったのです。
 
このまま百年記念塔が解体されてしまえば、たとえエビデンスが無かろうと、途中でどんな恣意的な処理がなされていようと、外観さえ整えれば道の「公信力」によってどんなことでも「事実」として定着させることができる、という前例が生まれてしまいます。これは北海道の民主主義にとって極めて憂慮せざるをえない事態です。
 
北海道の民主主義を守りたい。これが私たちが訴訟を起こした最後の理由です。
 
このような私たちの主張を弁護士である原洋司先生に法的に整理していただいたのが今回の住民訴訟ということになります。この訴訟は、北海道の歴史と文化の象徴である北海道百年記念塔を守るための道民の道民による道民主権の実践であることを最後に申し添えます。
 
 

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